研究課題/領域番号 |
15520058
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹下 政孝 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (30163398)
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研究分担者 |
鎌田 繁 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70152840)
柳橋 博之 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (70220192)
仁子 寿晴 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (10376519)
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キーワード | ネットワーク / 神秘主義(タサウウフ) / シーア派 / イスラム法学 / ハナフィー派 / イスラム哲学(ファルサファ) / 神秘主義教団 |
研究概要 |
当研究は非政府組織ネットワークというテーマを掲げているが、世界を騒がせたアルカーイダなど通常、現代イスラム世界で問題になるグループだけを研究対象とするわけではないという点に特色がある。彼らを特別視するとかえってことの本質を見失うとの共同研究者間の合意の上に、社会的にも歴史的にも幅広くネットワークという相のもとでもう一度イスラムをとらえかえしてみるという試みであった。もとよりこの広大なテーマを尽くせるはずがないが、ある程度の拠点を作ることができたのではないかと思われる。討議を続けるなかで、学問的蓄積を考慮しつつ現時点でこのテーマに区切りをつけていくためには三つの方向がありうることが判明した。(1)異なる社会階層間での知の伝達をさぐること、(2)それぞれにディシプリンを持つグループ間における知の交流の調査であり、(3)新たなグループが形成されるときに既存のネットワークから働く力を調べることである。このような共通認識のもと各研究者が個別テーマに関して研究を行った。(1)に関する成果は、竹下による、中世トルコ社会を形成したさまざまな層の人々の間で神秘主義(タサウウフ)がどのように機能したかの調査である。ふつうタサウウフとはみなされていない形の神秘主義がエリート層ではなく、一般のひとに見出され、エリート層と一般のひとびとの間で二種類の神秘主義がある種のすみわけをおこなっていたということが報告された。(2)の成果は鎌田、仁子による。鎌田はシーア派と神秘主義教団との関係に注目した。シーア派では神秘主義教団でいわれる聖者が語られることはないが、実際にはシーア派の長たるイマームを論じるときに聖者を論じるときとよく似た思考法がみられることを見出した。グループ間にある種の知の伝達がある証しであろう。仁子はイスラム哲学(ファルサファ)の伝統に数学者が果たした役割がかなり大きいことを報告した。(3)の成果は柳橋による。柳橋は現在でも大きな法学派の一つハナフィー派の学派形成の問題に取り組んだ。以上の諸研究によって最初に立てた三つの方向がそれぞれに研究として成り立っていくことが少なくとも明らかにされた。
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