研究概要 |
本研究は、セバスティアン・フランク(Sebastian Franck,1499-1542)における終末論と神秘主義との関係を分析することを通して、プロテスタント的スピリチュアリスムスの思想構造を解明することを意図していた。研究に際しては、フランクの二大主著である『年代記、時代の書、ならびに歴史聖書』Chronica, Zeytbuch vnd Geschychtbibel(第一版1531;第二版1536)と『パラドクサ』Paradoxa(第一版1534;第二版1542)の原典テクストを比較対照しつつ、終末論に関する彼の態度変化を明らかにしようと努めた。 上記の研究目的を遂行するために、一年目は上記の原典テクストを入念に読み、終末論に関するフランクの態度の変化を明らかにする作業に徹した。二年目は夏休みを利用してドイツを訪れ、ミュンヘン大学を拠点としながら、ドナウヴェルト、アウクスブルク、ウルム、ストラスブール、バーゼルなどの、フランクにゆかりの深い都市で幾つかの現地調査を実施した。それと同時に、終末論と神秘主義の相互関係という視点から、フランクのスピリチュアリスムス思想について原典研究を行なった。 二年間の研究の結果、フランクのスピリチュアリスムスは、ストア主義的汎神論やネオ・プラトニズム的二元論に親近的な概念を用いていても、基本的には聖書的・キリスト教的な救済史的・終末観的な歴史観に基づいたキリスト教神秘主義の系譜に属するものである、ということが明らかになった。 研究成果は、「セバスティアン・フランクの根本問題」ならびに「セバスティアン・フランクにおける終末論と神秘主義」という学術論文に纏め上げ、二つの学会誌に発表した。残された課題としては、神秘主義、歴史の中間時性、および終末論の間の思想的相互関係を分析し、フランクを代表とするプロテスタント的スピリチュアリスムスの思想構造を解明することである。
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