本年度の研究目標は、選択した各拠点のメンバーの入信動機を中心とした生活意識を仮説的に明らかにすることにあった。具体的な日系新宗教として世界救世教いづのめ教団を、拠点として、北埼玉教会(研修センター)、馬山教会、Johrei Science Center、およびパリ教会の調査を行ない、以下の結果を得た。北埼玉教会には日系ブラジル人のコミュニティが形成されており、彼らは群馬県大田市などで働く出かせぎ労働者である。多くはブラジルで入信しており、本教会は、彼ら日系ブラジル人の交流のひとつの拠点となり、その凝集性を高める機能を果たしている。馬山教会は、地元近隣の韓国人によって構成されており、多くは、近代医学で治癒しない病の治癒の目的で参画している。Johrei Science Centerは、本教団の中心的実践である浄霊を宗教的文脈から離脱させ、スピリチュアル・ヒーリングの一種として位置付けることを通して、本教団の脱宗教化を企図しているため、他拠点のようなメンバーシップとは異なり、クライアントや浄霊の施術資格の取得希望者として本拠点に関わっている。パリ教会では、ブラジルやその他の南米からの移民がそのほとんどを占め、彼らのコミュニティが形成されている。パリで入信したものも少なくなく、南米系移民のアイデンティティの持続とその凝集性を高める機能を果たしており、異文化への適応ストラテジーと解釈できる。以上のように、異文化社会におけるエスニック・コミュニティ形成の場、治癒、脱宗教化による技術受容という3つの特徴をさしあたり、観察できる。
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