本研究は、日韓英仏における世界救世教を事例として、日系新宗教運動のグローバル化の現代的特徴を明らかにすることを目的としている。日本の北埼玉研修センターは日系ブラジル人の日本での適応、情報交換、信仰を媒介とした社会的紐帯の形成、更新の場となっている。韓国の馬山教会は、地元のメンバー、特に女性の韓国社会における市民としての自立を支援する機能を果たしている。イギリスのジョウレイサイエンスセンターは、浄霊と呼ばれる浄化儀礼をスピリチュアル・ヒーリングと再解釈することによって、ロンドン郊外の病院に代替医療として導入を企図していた。フランスのパリ教会は、ブラジルを主とする南米移民のコミュニティとして機能しており、北埼玉教会同様、パリでの適応、情報交換、信仰を媒介とした社会的紐帯の形成、更新の場となっている。日系新宗教のグローバル化は、日系移民社会から、非日系社会へと60年代以降大きくその様相を変化させてきたが、以上の四つの事例から90年代以降の新たな現代的変容が明らかになってくる。その現代的変容とは、1 日系社会での定着以降、日系移民とその子弟の日本への出稼ぎを結果的に支援する装置となるという、日本への宗教的還流、2 伝統的社会意識を変革する場を提供するという社会変革の触媒化、3 浄霊儀礼のレギュレイティヴな儀礼としての位置づけが、ホスト社会の文化への適合のために、代替医療の一技法として再解釈されるという、脱文脈化、脱宗教化、4 定着の成功した拠点が中心となって非日系社会へと布教が展開されるという、三重の宗教文化複合、の四点である。多中心化した拠点から世界の諸地域へ移動する宗教は、日本での宗教的解釈や人的資源的配分を超越し、代替医療の文脈においてニューエイジ化する一方で、伝統的社会を変革する倫理と実践を提供するという、グローバル化の新たな局面を迎えていると言えよう。
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