研究課題
基盤研究(C)
本研究は、ロンドンのJohrei Science Centre(JSC)、パリのパリ教会、熊谷の北埼玉研修センター、そして韓国馬山市の馬山教会という世界救世教いづのめ教団の世界に点在する四つの拠点を比較検討することによって、宗教のグローバル化の現代的特徴を明らかにすることを目的とした。JSCは、スピリチュアリティ文化の文化ヘゲモニーの中で宗教がその実践を脱宗教化するという事態を示しており、それはカルト化と表裏一体であること、パリ教会と北埼玉研修センターは、拠点の移民センター化と移民による信仰共同体の形成というエスニック集団の社会的紐帯形成場として機能していること、馬山教会は、利他的な社会奉仕活動として実践を位置づける普遍的な市民意識形成の場として機能していることが明らかになった。各拠点をマクロに捉えれば、異文化地域に受け入れられるための戦略としての脱宗教化現象、異文化地域に根付くための社会的紐帯形成場現象、自文化・社会地域でよりよく生きるための普遍的生活化現象、という三つの表現に最終的にまとめることができるだろう。自文化と異文化の軸、宗教と脱(超)宗教の軸、共同性に関する特殊性と普遍性の軸、これら三つの軸によって、宗教の現代的グローバル化空間は構成されていることが、本研究から仮説的に導出される。今後の課題としては、他の宗教の事例研究を行い、比較して、宗教のグローバル化理論を精緻化することが求められると同時に、これまで蓄積されてきた日系新宗教運動の海外布教研究の事例研究を本研究のパースペクティブで読み換えて、当該理論の精緻化に努めることであろう。
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