国内の全ての四年制大学約700校について、宗教立か、総合か文系・理系か、設立は何年かを調べた。そのうち、資料提供を得た約450校については、2002年度の講義概要集から、宗教に関係のある授業を選び、内容を26カテゴリーに分類した。その授業が対象とする学部・学科の種類、必修/選択の別、教員名、教員の性別、単位数、教職用科目であるか否か、指定テキスト・参考書等を調べた。この作業は研究期間内に完成することは困難であったため、100校を抽出し、それについてまず全体的に調べた。比較対象である米国の大学については、アメリカ宗教学会による調査、文献をもとに実態と教育理念史を調べた。 その結果わかった主なことは以下の通りである。 (1)米国の大学で公立校でも8割に存在する「キリスト教入門」「聖書入門」の授業は、日本の大学では「神道」ではなく「日本研究」と名づけられた授業に該当する。米国でも日本でも、宗教学者のディシプリンに対する自己理解(異文化理解や多文化主義重視)と、宗教関連の授業の実態(ナショナル・アイデンティティ重視)には少なからぬ違いがある。また、米国でも日本でも、伝統的な哲学系、人文系の授業の方が、社会科学系の授業よりもなお圧倒的に多い。 (2)宗教に関する授業は、全体的にみると公立大学の方が、(非宗教系私大はもとより)宗教系私大よりも多様性とバランスを有している。 (3)生命倫理・環境倫理に関する授業が増加しているが、そのうち40%近くは宗教的な観点を加えていた。 (4)宗教関係の授業を担当している女性教員の比率は米国や他の分野と比べて低く、その低さは「ジェンダーと宗教」をテーマとする授業についても変わらなかった。 この研究成果は、17年3月に開催された第19回国際宗教学宗教史会議世界大会において、「宗教教育の国際比較研究」をテーマとする特別パネルで発表した。英文論文集の刊行も検討している。
|