研究概要 |
本研究は、中国西南部に存在するシャーマニズム(巫教)が中国の様々な宗教的伝統と密接な関係を保ちつつ共存する様が観察される中国西南部について、現地に大量に存在する文献資料に注目し、とりわけ道教との関連を重視して考究するものである。 こうした視点では、これまで台湾や香港を中心とする中国東南部での調査事例が数多く報告されており、東南部における研究成果を活かすことが重要である。そこで8月に台湾道教と民間信仰の専門家である筑波大学の丸山宏教授を招き、研究会を行った。丸山教授より東南部を研究する視点から西南部の状況についての所見を披瀝して頂き、それをもとに意見交換するという内容であった。 現地調査については、2002年冬より中国を発端として蔓延するウイルス性肺炎SARSの流行に伴い、中国現地調査や渡航そのものの自粛が求められたことから、8月の調査は実現せず、10月末に貴州省における調査を行ったものの、当初予定されていた貴州省道真県旧城における調査については、これを見送らざるをえなかった。 以上の如く、中国現地調査については、不本意な結果となったが、3月には全米最大のアジア学会AASにて、Society for the Study of Chinese Religionsの支持を得たパネルSinging, Fighting, and Recounting : Transmission and Interaction of Religious Traditions with Popular Cultural Forms in Chinaにおいて稲葉および森が研究発表、研究交流を行い、各国の研究者と意見を交わすことができた。
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