二〇〇三年五月から七月にかけて、オランダ国ライデン大学図書館、イギリス国大英図書館、徳島県立博物館、同文書館、香川県立歴史文化博物館、鎌田共済会郷土博物館、丸亀市立資料館などの四国遍路絵図類の調査を行った。その結果、新たに二十二点の「四国遍路絵図」を知ることができた。それらの写真撮影と分析を行い、その成果は、「四国遍路絵図に関する一考察」『山形大学歴史・地理・人類学論集5』として刊行した。その要点は以下のようなものである。今回新たに発見した絵図の中でも、とくに徳島県立博物館所蔵「四国遍路絵図」と徳島県立文書館所蔵酒井家文書「四国遍路絵図」と鎌田共済会郷土博物館所蔵「四国遍路絵図」は注目される。すなわち、従来、A'型としてきたものに二種類あり、A'をさらに二つに区分すべきではないかと考えられる。たとえば、徳島県立博物館所蔵「四国遍路絵図」HSK000398はA'とし、同HSK000397はA''とすべきだと考えられる。HSK000397はHSK000398をモデルとし、簡略にしたものといえるが、「あきのみやじまへ舟路十八り」ではなく、「二十五り」とするなど、相違点もある。とすれば、A'A''A'''の三つあることになる。また、A''型はA'型より新しいことがわかる。 また、徳島県立文書館所蔵酒井家文書「四国遍路絵図」(サカイ00265)は、A'型であるが、枠外に「天保三年辰四月廿日求之 堺屋弥蔵」とある。その文言から、天保三(1843)年に堺屋弥蔵が購入したものということがわかる。それは、A'型で制作年が推測できる唯一つのものである。 さらに、鎌田共済会所蔵dc185・186のように一見、C型の変形と思えるが弘法大師座像がないものがあった。それにより、「四国遍路絵図」の型式にG型をたてるべきと考える。
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