研究概要 |
今年度は主としてこの主題に関係する各自の研究をそれぞれに深めることに重点をおいて研究計画を遂行した。 中畑は、新プラトン主義者の教育プログラムの内容を解明するとともに、そのプログラムがどのように彼らによる古典的テキストの読解・註解に影響を与えているのかを明らかにし、新プラトン主義における「思考の制度化」というべき事態を具体的に跡づけた。さらに、そのような成果を取り込みながら、「感情」、「志向性」、「ファンタシアー」(phantasia, imagination)などの哲学上の主要概念について、その形成と変容過程をたどった。とりわけ表象や想像を意味するファンタシアーの概念については、その起点となったアリストテレスの思想を従来とは異なる仕方で読み解くことによってファンタシアーの概念の歴史を別の視点から考えることを試みた。 内山は、プラトンのテキストの校訂および出版の歴史において一つの時代を画したステファノス版の成立をめぐって、その前史、この版の具体的特質、その影響を分析し、思想の継承と受容におけるテキストの校訂、印刷、出版という具体的基盤の役割を解明した。また他方で、ギリシア初期思想家の思想とその文体との緊密な関係を、テキストに即して具体的に論証した。さらに古代においてきわめて重要な知的営みであった医術および医学思想と哲学的知との関係について、ガレノスの医術文書の解明を進めている。
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