研究概要 |
かなり大きなテーマを考えていく、ひとつの足がかりとして、本年度は、近世・近代を問わず基礎的な資料の収集を継続的に行った。その上で、下記の二点について考察してきた。 1,垂加神道の近代における再生のあり方の検討を行った。ナショナルな語りを持つ垂加派の言説が、近代において呼び出される様を、系譜的な語りと、その語りが隠蔽する断絶のありようを浮き彫りにすることで、ナショナリズムが近代の問題であることを捉えようとした。特に近世的な色彩を持つ垂加神道の顕彰は、限られた人々の中での語り直しの作業として、丹念に掘り起こしを行うことを目指した。 2,戦後の日本文化論のありようを考察する中で、アジアへの視線が閉ざされていく様を思想レベルの問題として明らかにしようと考えて来た。特に日本文化論と言われるものが、アジアと分かたれ、1945年以後の国境線をのみ前提とした一国の中に関心を集中させていくのか、、そこでの問題は何かを考えて来た。日本文化論の戦後の展開と同時に、併行して思想家としての丸山真男、竹内好の検討にも入った。戦後日本文化論のあり方とは、丸山の思惟と重なり合うものであり、それを浮き彫りにするには、竹内の思想が有効ではないかとの予測に基づく。
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