研究概要 |
第三次クリュニー大修道院(Saone-et-Loire県)とブルゴーニュ地方最古のベネディクト会修道院であったムティエ・サン・ジャン(Cote-d'Or県)はともにフランス革命の後、人為的に破壊され現存しない(クリュニーは南袖廊のみ現存)。このため、それぞれの修道院建築を飾っていた彫刻の全容は掴めていない。本研究の目的は、1)クリュニーとムティエ各々の彫刻様式の特質を明らかにすること、2)クリュニー西扉口を請け負った工房とムティエ工房が同一であったことを検証すること、にある。 平成16年度の調査研究は、クリュニーでの研究環境が改善されたこともあり、クリュニーを重点的に行なった。オシエ美術館資料室に保管されているKenneth J.Conantの発掘野帳(1929年〜1956年)を調べ、とくに西扉口周辺の発掘地点であるpit II,X,XXXの記録を精査し、発掘状況を確認した。その上で野帳の記録と発掘された彫刻断片を照合するため彫刻収蔵室(depot)にて実測、撮影を集中的に行なった。また、2月にクリュニーのtour rondeから出土した未公開の彫刻断片を調べることもできた。 ムティエ・サン・ジャンについては、平成15年度に収集した史料を基に、修道院の歴史を跡付けた。またムティエの建築に関しては、柱頭の形状と寸法、エッチングをもとに第三次クリュニー大修道院系の平面と立面をもつものと推察した。柱頭彫刻の図像の選択と配置に関する研究は柱頭の数が限られているため難しいが、現存図像については、特定の地域(ブルゴーニュ)とのむすびつきを示す。図像の選択とそれらの構成・配置については、新約聖書図像研究会と日仏美術学会で発表した。
|