研究概要 |
本研究は、平成12〜14年度の3カ年にわたり科学研究費の助成を受けて実施した「南米旧スペイン植民地キリスト教関連施設の美術装飾に関する学術調査」(基盤研究B)の成果をもとにして、撮影画像資料のデータベース化をおこなうとともに、これにもとづく美術史・歴史人類学の学際的研究の深化を目指した。 データベースについては、ポジ写真のデジタル化を進めるとともに、総計約15,000カットの画像の整理と分析を進めた。その成果の学術利用を目的として開設したウェブサイトwebarcos(http://art.f-edu.fukui-u.ac.jp/~webarcos)では、現在ボリビアの植民地時代聖堂40箇所について外観および内部装飾の画像を公開している(内部装飾については、パスワード設定により学術利用者のみに公開。使用言語はスペイン語)。 収集資料を基にした共同研究においては、研究代表者・岡田が美術史的視点から、分担者・齋藤がエスノヒストリーの視点から、成果のとりまとめをおこなった。その主な内容は、1)「メスティソ様式」とよばれる聖堂装飾美術にしばしば用いられた図像モチーフの起源と流通に関する研究、および、2)先住民へのキリスト教布教のプロセスでのイメージの利用と、これに対する先住民の反応についての研究のふたつからなる。1)については、従来の植民地文化論において支配的であった単純な異文化混交モデルに対し、植民地時代のヨーロッパにおいて形成された他者表象と植民地社会の意外な接点を指摘することで、新たな理解の方向を示した。また、2)に関しては、先住民布教村の運営に関わった宣教師の記録などの精査を通して、とりわけイエズス会の聖像利用に関わる神学的枠組みを論じるとともに、先住民の側に存在した宗教的メンタリティーが、外来の宗教的イメージの受容の形態に大きな影響を及ぼしうることを明らかした。
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