本研究は、材質が脆弱である等により、実物の公開期間に制限されることが多い日本美術等の作品が、いつ、どこで公開されるかという公開情報を、インターネットを介して研究者を含む多くの人々に流布させるための手法を研究するとともに、日本では従来省みられることが少なかった個別美術作品の公開・所蔵等の履歴情報の蓄積を図り、そのデータに基づいて、近代日本美術受容史研究を試みるものである。その具体的な研究手法として、以下の3項目を実施した。 (1)日本美術を中心とした各種美術作品の公開情報に関する逐次更新型データベースの構築、インターネット上への試験公開 2003年11月に「文化財と出会う-国宝・重要文化財(美術工芸品)等の公開情報-」(http://www5f.biglobe.ne.jp/~bunkazai/)というホームページを開設した。開設以前に、国宝・重要文化財に指定された美術作品の所蔵・保管者約20機関と当該ホームページへの協力交渉、ホームページ用のデータ入力等を実施。2006年3月31日現在、7機関371件の作品の公開情報を掲載、開設以来の当該ページへのアクセス数は、同日現在5406件である。 (2)上記データベースで取り上げる各作品についての履歴情報の収集、データベース化 公開履歴に関しては、博物館・百貨店等の展覧会図録等、所蔵履歴に関しては、指定文化財目録、戦前の売立目録等を参照し、履歴情報の収集、データベース化作業を進めた。 (3)履歴情報を題材とした近代日本における美術作品受容史研究 美術作品の公開・所蔵履歴データをもとに、近代日本における美術受容史の研究を実施した。具体的には、近代における美術作品公開の場としての博物館、社寺、百貨店などの機能の研究、個人による美術作品所蔵の意味に関する研究を行なった。
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