研究課題
基盤研究(C)
洞窟壁画の動物像がどのような造形原理により極めて写実的な表現になったのかを解明するため、「統合」という概念のもと、フォン=ドゥ=ゴームとアルタミラの両洞窟で独自にデータ収集し、洞窟内の自然の岩面の形状と作者たちが作り出した形態が一致していることを明らかにすることができた。それにより、作者たちは洞窟の暗闇に入り、持ち込んだ簡単なランプの炎の作用により、自然の岩面に動物のかたちを見いだすことで表象行為を行っていたのではないか、という考え方を提出することになった。作者たちにとっては、見ることによる表象が第一義的に重要であり、その後、自分たちが見たかたちを彩色などでなぞることにより、現在の我々が写実的な動物像と見なす作品になったのではないだろうか。このような成果を受けて、内容論的な解釈論にも踏み込み、作者たちにとって見ることの表象にいかなる意義があるのかを考えることになり、「呪術説」などを検討した。この研究は、洞窟壁画の写実的な動物像に対象を絞っており、量的には動物像をしのぐとされる「記号」などの抽象的表現などは射程外ではあるが、「呪術説」に従うなら、「記号」も付加的なものとして位置づけられるのではないだろうか。洞窟壁画の作者たちは、自然が本来有している形状に謙虚に寄り添い、そこに自分たちの必要とする形態を見いだし、最小限の制作行為により、現在の我々をも驚嘆させる写実的な動物像を実現させることができたのである。
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スペイン・ラテンアメリカ美術史研究会創立十周年記念特別号
ページ: 1-6
若山映子先生退職記念論文集
ページ: 1-16
鳴門教育大学研究紀要(芸術編) 第21巻
ページ: 314-322
Bulletin of Japanese Research Association of Spanish and Latin American Art History, Special issue of 10^<th> Anniversary of Foundation
Articles dedicated to Professor Eiko Wakayama (provisional title of book), Osaka University
ページ: 1-19
Research Bulletin of Naruto University of Education Vol.21