本年度は予定どおり、雪舟の絵画活動について、(1)史料の探索、(2)収集史料の読解と分析、(3)史料のヴォキャブラリーおよびイディオムの抽出・考察を行った。とくに第1年度の試験的研究という意味から、雪舟の生涯の一定期間に絞ってそれを試みた。応仁元年(1467)、雪舟が遣明船の一行に加わって中国に渡り、足かけ3年の旅を経て日本に帰ってくるまでの期間である。従来の研究に欠けているものとして、今回は特に雪舟らの渡航の10年前の享徳度の遣明船の史料に注目した。その際の記録である「允澎入唐記」は、10年前のものとはいえ、江南と北京の間の旅の実態について、雪舟らの旅にも照明を与えてくれることが、今回の調査研究で明らかになった。研究内容としては私のゼミの大学院生らとともに、原典探索からはじめて、現代活字への翻刻、語句・文辞の解明、現代語訳を踏まえて、ヴォキャブラリー、イディオムのデータベース化を行った。データベースは私のホームページに登載予定である。
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