研究代表者は、昨年度に引き続き江戸時代動物画に関する作品調査を継続的に行ったが、今年度のもっとも大きな成果としては、単著として『江戸の動物画--近世美術と文化の考古学』(東京大学出版社、2004年12月、A5判、376頁)を刊行したことである。本書はこの5年ほどの間に本研究課題に関連する問題を、勤務先の学習院女子大学『研究紀要』や国文学系の学術雑誌などに個別に発表してきた論文を骨子として、さらに大部な書き下ろしを加えたものである。扱った動物は「犬(狗)」「猪」「虫」「兎」「狐」などであるが、本書では、これらの動物をモチーフとした江戸絵画を紹介するだけでなく、それぞれが絵画上において「イメージ(形象)」化される際に働く江戸人の思考が、何らかに「象徴」「擬人化」「地口(ことば遊び)」のいずれかによっているという、江戸の動物画の原理を発見し報告した。ただし出版上原稿枚数の制約から、本研究課題に関して研究代表者が行ったすべての成果を本書に盛り込むことはできなかったので、さらに残された課題については2006年3月刊行予定の『学習院女子大学研究紀要』第8号で論文発表する予定でいる。
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