本年度は3年間にわたる本研究の初年度にあたる。そのため、海外における資料調査を中心とした研究の基礎づけを行なうことを主眼とした。以下、15年度に行なった活動を記す。 1 海外での資料調査 8月下旬から9月中旬にかけて、パリの市立トルネイ美術館に所蔵される、フランスの19世紀後半から20世紀の20年代までに出版された「美術全集」をリストアップ、データ化した。その結果、1850年代から少しずつ全集の形式が登場し始め、70年代以降、つまりパリ・コミューン後の第3共和性に入ってから増加していくこと、さらに第一次大戦終了後の1910年代後半から「美術全集」のブームが生じてきたことも確認された。 2 資料調査のためのネットワークの構築 平成12年度から14年度にかけて行なった「カタログ」研究において構築したネットワークの拡充をパリおこなった。また、イギリスに関してはロンドンの市立図書館との接触を行なった。 3 日本の「美術全集」の調査 海外の調査と平行して明治後半から昭和前期の日本における「美術全集」の調査も行なった。西洋の「全集」から遅れること3〜40年後、わが国にも「美術全集」の時代がやってくる。ただし、それらが海外の翻訳ではなく、一般的美術書の抄訳的な形式で編集されていることが注目された。 4 研究実績に関して 15年度は上記のように研究の基礎がためをする期間であったため、研究を発表すること以上に、資料のデータ化を含めた見取り図を描くことに集中した。そのため、本研究に関する論文を発表することはなかった。次年度は、いくつかの論文、報告を行なう予定にしている。
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