16年度は、昨年度からの作業の継続を中心にすえた。すなわち、謡の「拍子」に関する文献蒐集および、その書誌学的な研究である。蒐集された資料は、表紙等の写真を撮影し、それも含めたデータベース化をすすめつつある。このデータベースは、次年度に作成する予定にしている報告書の、中心的な部分となるはずであり、作業は、慎重にゆっくり、間違いのないように、進行中である。もともとの計画では、16年度中に、それぞれの書物や論文についての書誌的事項だけではなく、内容についてのコメントも完成させる予定にしていた。しかし、それは、かなりの見識と力量を必要とする作業である。これについては、次年度において集中的にとりくみ、完成をめざす。 また、16年度は、謡の「拍子」がどのように歌い手に知覚されているかということをテーマとした、研究発表を、フランスのパリで7月におこなわれた国際学会(CHIME)においておこなった。パネルのテーマは、「日本の音楽における口頭性と即興性」でというものであり、原稿は、いずれ、論文としても発表する予定である。 謡の学習者の観察については、あまり十分なことはできなかったと思うが、それでも、録音資料等によって、関西や福岡などの謡だけでなく、民俗芸能として伝承されている謡についても、その拍子がどのように知覚されているかという観点に目を向けた観察をおこなった。具体的には、謡に合わせて、太鼓などの拍がどのように合わされているかを記述する作業をおこなった。これについては、次年度において、論文の中にデータとして示すことが可能であると思われる。
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