平成17年度は、科学研究費補助金の助成を得て、学会・口頭発表を2回行い、それらに基づいて2本の論文を執筆した。さらに、これら、及び、平成16年度までの科学研究費補助金による6本の論文に基づいて学位申請論文を執筆・提出し、博士(比較文化学)の学位を取得した。以上のことを具体的に述べれば…2005年5月1日、説話・伝承学会2005年度大会にて口頭発表(「大施太子本生譚の主題とその達成」)、2005年9月10日、北海道印度哲学仏教学会・第21回学術大会にて口頭発表(「『三宝絵』とその説話」)、2005年9月30日、桃山学院大学に博士(比較文化学)学位申請論文(「ジャータカ説話の原型とその展開」)を提出、2006年2月2日、桃山学院大学にて博士(比較文化学)学位申請論文の審査、2006年3月24日、論文「大施太子本生譚の誕生」(『人文研究』第111集)公刊、2006年3月24日、桃山学院大学にて博士(比較文化学)学位の授与、2006年10月、論文「『三宝絵』研究序説」(『印度哲学仏教学』第21号)公刊予定。博士(比較文化学)学位論文(「ジャータカ説話の原型とその展開」)の目次を挙げておけば…第一章『三宝絵』とその本生譚、第二章シビ王本生譚の原型と展開、第三章シビ王本生譚の主題とその達成、第四章スタソーマ王本生譚の原型と展開(一)、第五章スタソーマ王本生譚の原型と展開(二)、第六章スタソーマ王本生譚の思想的背景、第七章大施太子本生譚の原型と展開、第八章大施太子本生譚の誕生、となっている。日本の平安時代・永観2年(984)成立の仏教説話集『三宝絵』に入ったジャータカ説話=本生譚にどのようなインド的、仏教的背景があるのか、その原型または起源、展開または変容の諸相を明らかにしようとしたものである。あるいはそれぞれのジャータカ説話=本生譚、ないしその類型話が文学としてどのように読み解けるかを考えようとしたものである。
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