研究概要 |
本年度は、トロント大学名誉教授ソーニャ・アンツェン氏との共同研究を、3回にわたって実施した。そのうち、9月2日〜14日と3月20日〜27日の2回は、伊藤がカナダへ出向いてアンツェン教授の許で『更級日記』の翻訳を進めた。また、11月から12月にかけて、アンツェン教授が日本語教育の視察のために来日することとなったため、その機会を利用して数度にわたって伊藤の研究室で共同研究を実施した。 これら一連の共同研究によって、年度末までには『更級日記』本文の基礎的な翻訳作業を終えることができた。今後は、英訳本文の完成度をさらに高めるとともに、本格的に注釈作業に取り組み、それらの解説と注釈がある程度できあがった段階で(今秋までを予定)、アメリカの大学出版部との具体的出版交渉を進める計画である。 なお、この3年間の研究成果の一部は、"Early and Medieval Japanese Literature, An Anthology"という日本古典文学に関する浩瀚なアンソロジー(コロンビア大学出版部近刊)に収録されることによって、広く英語圏の読者に公開されることになっている。ただし、このアンソロジーの出版は、当初の計画よりも随分遅れていたのだが、それも、いよいよ今夏には刊行の予定である。 なお、本研究課題と関連する成果として、伊藤は、平成17年6月に学習院女子大学において「東と西の『更級日記』」と題する講演を行なっている。また、同年11月と12月には、学習院女子大学におけるアンツェン教授の講演会と特別講義を企画、運営した。
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