本研究は文学研究における名所図会研究を、エコノグラフィー研究と連動させる研究課題のひとつである。 具体的には、『阿波名所図会』『江戸名所図会』『都名所図会』等の版本名所図会におけるテキスト化ならびに挿画の分類・キーワードの付与をおこない、名所図会データベース化についての方法論の開発を検討しデータを蓄積した。モチーフインデックスと呼ぶ、挿画をモチーフごとの細部に分割し、さらに分類して索引を作成し、テキスト検索の基礎となるテーブルや風俗描写の記述に有効なリレーションの構造を中心に、リレーショナル・データベースの設計および作成を行った。 それらのデータから名所図会に見られる風俗・地域・文化を通して名所図会挿画における文学的意味の解明の研究を行った。成果は中間報告として公表したが、さらに今後データをもとに解析を進める。 研究にともない新たな数項目の問題点が明確になった。大まかにいうとその一つはシステム開発の問題であり、今一つは、本研究が一次資料からの帰納的研究が要求されることによる、諸領域にわたる関連の資料の問題である。これらについては今後さらに研究を進めていく予定である。 作成したデータベース等の成果は紙媒体により発表したほか、今後電子媒体として公開の準備をすすめている。またそれらのデータベースを、研究・教育の領域においての活用することの方法等について研究論文として報告した。
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