研究課題の対象である四人の学者文人の漢籍読書ノートの内、沢田一斎『奚疑斎蔵書』(4冊)、奥里松斎『拙古堂日纂』(39冊)、同『拙古堂雑抄』(12冊)、森川竹窓『古香斎筆記』(69冊)の三者四点について、龍谷大学付属図書館(京都市、七月・一月)、大阪府立中之島図書館(大阪市・七月・一月)、国立国会図書館の各収蔵図書館において、原本の調査と複製資料収集を施した。これらについて、抄記された漢籍の書目の一覧表を作成する作業を開始している。 また、抄記された漢籍と同版または異版の内、わが国に舶載され伝来するものについて、および、都賀庭鐘を含めた四人の関連著作、唐船持渡書の舶載記録等について、上記の機関のほか、慶應義塾大学三田メデイアセンター、東京芸術大学付属図書館、国立公文書館内閣文庫、東京都立中央図書館加賀文庫、前田育徳会尊経閣文庫(いずれも東京都。おおむね複数回訪館)において、調査と資料収集を実施した。抄記された漢籍と諸本との同定照合の作業である。 これらの作業を通じて、予想を越えて、中国明清の著作が豊富に写されていることが明らかになりつつあるが、写された書目すべてについて概要をまとめるための作業を継続する一方で、わが国近世中期文学と学芸に直接影響を与えた明代文集の典型的な事例について考察をする必要を考え、帰有光(号震川1506-71)の著作と関連資料(各種明代散文の総集)について調査した。また、今回の研究課題においては、奥田松斎の『拙古堂日纂』のもつ意義が特に大きいことが分かってきたため、本書の詳細のみならず松斎の著作伝記についての調査も開始した。
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