昨年度に引き続いて、四人の学者文人の漢籍読書ノートの内、奥田松斎『拙古堂日纂』(39冊)、森川竹窓『古香斎筆記』(69冊)、都賀庭鐘『過目抄』(13冊)の三者三点について、大阪府立中之島図書館(大阪市、七月・一月)、龍谷大学学術情報センター(京都市、七月)、天理大学付属天理図書館(天理市、九月)の各収蔵図書館において、原本の調査と関連資料収集を行った。また、上記の機関のほか、国立国会図書館、国立公文書館内閣文庫、東京都立中央図書館加賀文庫(いずれも東京都)、東北大学付属図書館狩野文庫(仙台市、二月)において、漢籍の諸本調査と関連資料収集を行った。先方の都合等により、予定した調査を来年度に延期し、来年度予定の調査を繰り上げた場合もある。 奥田松斎『拙古堂日纂』は多量の明清新渡の漠籍版本について、書誌的な情報を保存しているために、わが国明清学芸の受容の考察に際して、有効な同時代資料として評価できることがますます明らかになった。本書を手がかりとして、個別の事例研究として、『鉄網珊瑚』、『明文英華』などの明人著作と近世中期の上方学芸・小説との関連を論じたものを研究論文として発表した。なお最終年度に予定している資料報告とは別に、本論文を含む論文集を、今回の研究成果の一部として公刊することを希望し、平成17年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)を申請応募し、現在審査中である。 一読書人の漢籍の読書記録として、四者はどういう特色があるか、浄慧『儒釈雑記』(1707序)、松崎慊堂『慊堂日歴』(1823-44)など、比較検討のための資料収集を行った。また、明清の漢籍の内、和刻や翻刻されたもの、特に書学・小学関連の著作について(例えば松斎・竹窓が関与した『翻刻隷続』など)、資料収集を行った。
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