この研究は、地方の人形浄瑠璃のかしらを資料として、かしらの方面から人形浄瑠璃の発生と展開について考察することを目的としている。平成16年度は、栃木県塩谷郡高根沢町伏久人形のかしら調査、長野県南佐久郡小海町の親沢人形三番叟のかしら・茨城県真壁郡真壁町白井座のかしらの再調査や和歌山県に残るかしらの調査と聞き取り調査を中心に行ってきた。その結果、昨年度までの調査箇所数は全国およそ160箇所、調査したかしら数は約4600点となった。 現時点で、先に提出しているうなづき形式の発展過程に関する仮説に反するような事例はなく、仮説は生きていると考えている。この仮説に基づき、最も初期段階のうなづき形式と見ている「エンバ棒式」のうなづき形式を持つと共に実際に「エンバ棒式」かしらを用いて演じている唯一のところである親沢人形三番叟について、その特徴と価値を『親沢の人形三番叟』(平成17年3月 親沢人形三番叟保存会発行)にまとめた。 また、これも以前提出した仮説であるが、人形式三番の成立についての仮説についても、再考せねばならないような事例にも行き当たらなかった。この問題については「人形式三番の成立について」と題し、『年刊 芸能』11号(平成17年3月 芸能学会発行)に発表した。 今後もかしら調査を進め資料収集を行いながら、より確実さを増してきたうなづき形式の発展段階については、資料を整理し論文にまとめていく予定である。加えて、人形式三番の先の論文では問題点として挙げるにとどまった人形三番叟かしらの色の問題とうなづき形式の問題についても、資料を整理し考証していきたい。
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