1.7〜8世紀の日本で書写された仏典・漢籍・国書に関する、書誌を中心とするデータベースの構築 本年度は、田中塊堂氏『日本古写経現存目録』、『奈良朝写経』、『週刊朝日百科 日本の国宝』をはじめ、約50冊の書籍・展示図録類から、古代巻子本約630件(タイトル・所蔵者別)に関する書誌情報の入力を行った。表紙・紐・軸などの原装丁を残す古代巻子本の所在情報を整理する一方、それらの書誌情報が必ずしも詳細とは言えず、原本調査が必要であることを改めて認識した(次年度も継続)。 2.古代巻子本原本調査のための方法の開発 (1)書物としての古代巻子本は、美術工芸品や書作品としての性格も持ち合わせている。それらも含めて、古代巻子本に関する科学的データの採取をめざす本研究は、古代巻子本を出来る限り詳細に記述するための方法の開発を試み、最終的にA4版20枚からなる調査シートを完成した。 (2)軸端の素材を記述するために、株式会社ダイキンの協力を得て、本紫檀・紫檀(インドローズ、ソノケリン)・手違紫檀・本黒檀・縞黒檀・青黒檀・紅木・花林などの唐木の調査用標本を作製した。 3.敦煌文書のレイアウトの研究 『萬葉集』原本における、題詞と歌本文の位置関係を推定するために、敦煌文書における題と本文の位置関係を影印を用いて調査した。調査は継続中であるが、正式な形式の巻子本においては、基本的に、題と本文は同じ高さで書かれ、詩文集についても同様であったが、後代に詩文の本文よりも題を低く書くスタイルが現れた可能性のあることが明らかになった。
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