研究課題
基盤研究(C)
中世前期の南都における唱導の展開は、治承4年の南都回禄に大きな転機があったと考え、まずは回禄以前の院政末期の状況を把握しようとした。その結果、三国意識とそれに基づいた唱導の在り方として、興福寺僧覚憲の『三国伝灯記』の重要性を確認した。つづいて、南都回禄後の状況を、法滅の超克・再生のうごきと捉え、唱導の中世的展開の相を探った。その結果、東大寺や興福寺における南都復興の事業が、天皇家や九条家を中心とする藤原氏と南都僧たちとの連繋によって為され、そうしたうごきのなかに、中世的神祇信仰が形成された点を明らかにした。また、東大寺大勧進職の重源が果たした役割についても、その実態を解明しようとし、研究代表者と研究分担者とが参加するシンポジウムで報告を行い、一定の成果を導いた。また、法滅の超克のうごきは、唱導と隣接する縁起といった文芸の領域においてどのような経過をたどったのかを検証しようとした。ここでは、『建久御巡礼記』を中心に考察を進め、縁起の作成や再編が、堂塔建立の根本を支える論理として作用し、再建事業の基盤となっていた点を明らかにした。これらの成果の延長線上に、霊験伝承の生成を考え、研究代表者が従来から関心を寄せていた『春日権現験記絵』所収の貞慶に関する霊験譚に注釈的検討を加え、それが、院政末期から中世初頭へと推移する興福寺法相宗の法脈を意識して構成されていることを明らかにした。さらに中世前期に著された唱導文献の研究として、以下の2点を成果に加えた。まず、貞慶と深く関わる『讃仏果抄』所収の南都復興関係典籍の目録を作成した。つぎに、法会の場と唱導との関係を探る資料として、東大寺回書館蔵「大会以下表白白謙番句等」の本文を紹介した。
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軍記と語り物 42号
ページ: 37-48
Gunki to Katarimono Vol.42
春日権現験記絵 注釈 (所収)
ページ: 251-275
KASUGAGONGEN-GENKI-E Chukai
日本古典文学史の課題と方法 -漢詩 和歌 物語から説話 唱導へ-
ページ: 395-422
Nihon Kotenbungakushi no Kadai to Hoho - Kanshi Waka Monogatari kara Setsuwa Shodo e-(Issues and Methods in the History of Japanese Classical Literature : from Kanshi, Waka, and Monogatari to Setsuwa and Shodo)