戦時期・敗戦期文学(一九四〇年代の文学)の言語環境を、GHQ/SCAP関連資料や旧内務省資料などの周辺資料に確かめ、作品の原典研究と批評史研究を通じ、私的に定義する<「戦後」の文学>(朝鮮戦争を経た一九五〇年代以降の文学・三度目の世界戦争の回避)への試論を提示する。この研究の目的に従い、今年度は以下の作業を行った。 教科書研究センターや東京書籍(株)附設教科書図書館東書文庫において、敗戦初期の「墨塗り教科書」以前の資料を収集し(文献複写が許されず筆写)、国立国会図書館や早稲田大学中央図書館においてGHQ/SCAP関連資料を確認する作業を行った。国内の公的諸施設所蔵資料の確認作業を通じて得た成果を、次年度に敗戦期に生きる在り方と作品の例証の一つとして拙論にまとめ、また現在私的に作成する「年表」を補訂することに役立てる。また当初の研究実施計画に配した通り、次年度以降も論考を積極的に積み重ねたいと考える。しかしながら、この計画に記した個人所蔵及び地方図書館資料の確認作業やそれに基づいた踏査活動、在米資料の確認作業を行うことが出来なかった。これは補助金交付の決定時期に関わることでもあるが、それ以前に、今年度の国内における予備調査が十分でなかった自らに主因がある。この反省に基づき、次年度はこれを補うことにまず努めたいと考える。 別掲の雑誌論文の他に、2003年11月9日鹿児島純心大学における日本社会文学会九州沖縄ブロック大会で、「GHQ/SCAP関連資料から問い直す敗戦期の<紙の上の言葉>」と題した研究発表を行った。また、2003年9-10月『文学』(岩波書店発行)特集「被占領下の言語空間」では企画段階から編集に協力をし、井上ひさし他座談会『昭和文学史』第5巻(2004年1月集英社発行)では、ナガサキ原爆の視点から誌面構成に部分的な協力を行った。
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