平成17年度「研究実施計画」の記述項目に沿って、以下に記載する。 A:国内の公的所蔵資料の確認作業-主に国立国会図書館及び早稲田大学中央図書館、同大演劇博物館において原典確認作業や関連資料収集を行った。今回の調査で発掘した演博所蔵GHQ/SCAP関連資料は、初期検閲制度を考察する上で、貴重な文献資料であると考える。 B:個人所蔵資料の確認作業-棚町知彌、豊島猛、山地久造、故林裕三(遺族林隆三)の元検閲員の聞き書き調査を行い、その略歴や検閲活動を文書記録とした。特に豊島氏の略歴は、第二次世界大戦における日米欧の関係史の上からも興味深いものである。また故林裕三氏の個人所蔵資料は、資料が乏しい大阪地区の検閲制度を部分的に補い、また貴重な視覚資料であると考える。 C:在米資料の確認作業-05年9月に短期渡米調査を行い、米国メリーランド州立大学マッケルディン図書館所蔵のGHQ/SCAP在米資料を収集し、帰国後に日本側資料と対照した。これを、GHQ/SCAP検閲事例を傍証とした論考としてまとめ、成果の一端として公表した。また、当該部署責任者と研究計画を打ち合わせた。現研究段階の到達点を確認し、同様の観点から、その拡大と進展の可能性を求めた。 D:論考の積み重ね-GHQ/SCAP関連資料に基づいた個別の論考を新規資料と共に公表した。 E:一九四〇年代文学の関心に発したナガサキ原爆文学-05年6月日本図書センター発行『林京子全集』(全八巻)第八巻の「解説」を担当した。この書誌的及び年譜的調査を一年余りにわたって行い、他の研究者に共有され、これからの研究をその底辺部分から支える基盤構築に努めた。 加えて、私的な関心に基づく「敗戦期文学関連年表」の補訂や追記作業を継続した。この総文字数は四〇万字ほどになる。これは、「戦後文学」を再考する多義的な接近を促すことを期待する作業である。
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