本研究の実施計画には2つのポイント、即ち(その1)『東瀛詩選』の基礎的研究である本文研究のうち本文の校訂及び電子化テキストの作成と、(その2)収録詩人の評伝、『東瀛詩選』の編纂の意図、日中両国の文化交流史的研究などの文学史的研究である。本年度は(その1)基礎的研究の前半にあたり、以下のことを行った。 (『東瀛詩選』の基礎的研究のうち本文書誌調査) (1)『東瀛詩選』及びそれに関連する従来の研究成果や、関連資料を収集した。 刊行されている『東瀛詩選』影印本以外で本文資料として調査した『東瀛詩選』は以下のとおりである。 ・龍谷大学大宮図書館所蔵本12冊本(巻34までの本) ・東京大学図書館所蔵本8冊本(巻23までの本) ・東京大学図書館所蔵本16冊本(巻44までの本) ・京都女子大学所蔵本16冊本(巻44までの本) 『東瀛詩選』の3度に亘る出版の事情と書誌形態が確認できた。 (『東瀛詩選』の基礎的研究のうち電子化テキスト作成) (2)『東瀛詩選』の電子化テキストの作成を、佐野正巳編『東瀛詩選』影印本によって進め、基本的電子化テキストを30巻まで作成完了した。 (『東瀛詩選』の基礎的研究のうち出典調査と本文校異) (3)『東瀛詩選』に採録された漢詩作品の出典となる漢詩集の本文との校異のための基本調査を開始した。公刊されている詩集以外のものの一部については、版本所蔵の図書館で本文調査を行った。 (『東瀛詩選』の基礎的研究のうち成立事情調査) (4)『東瀛詩選』成立に関わる資料として、『東瀛詩記』(東京大学図書館蔵本)の調査を行った。また成立に関わる日本側の人物調査として北方心泉奉賛会関連資料の調査を行った。 (『東瀛詩選』の基礎的研究成果の日本漢詩表現研究への利用) (5)なお、電子化テキストは全体のほぼ3分の2を作成したので、日本漢詩の表現研究の一環として本朝麗藻注釈などの註釈研究に早速利用した。
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