本研究は、以下の2つの方法で展開された。 第一には、『東瀛詩選』の漢詩本文についての研究、すなわち本文の校訂と漢詩の電子化テキストデータベースの作成という基礎的研究である。 第二には、それをふまえての各収録詩人の評伝を中心とする、文学史的位置づけ、漢詩集編纂の意図や事情、明治初期における日中両国の文化交流史的研究などの、文学史的側面からの研究である。 以上の観点から、以下のような成果を得た。この成果は『東瀛詩選本文と総索引』(高島要編・勉誠出版)に収録した。 1.『東瀛詩選』の詩本文と『東瀛詩選』が典拠とした漢詩集との校異を付した、『東瀛詩選』漢詩テキストデータベースを整理作成した。 2.その際、詩人別の近世期漢詩別集及び収録詩人の作品を収載する漢詩総集の弁別と現在の所在を明示した、「『東瀛詩選』依拠漢詩集一覧」を作成した。 3.『東瀛詩選』の収録漢詩人を特定し、収録漢詩人数及び収録漢詩総数を明らかにした。 4.『東瀛詩選』の漢詩人の伝記的事象について、同書収載の「作者略伝」の内容の分析を通して明らかにした。 5.『東瀛詩選』漢詩テキストデータベースをもとに、漢字一字検索及び熟語での検索が可能な総索引を作成した。これには、作者(漢詩人)索引も付して利用の便を図った。 6.『東瀛詩選』と、他の漢詩総集(例えば『新編名家詩集』等)との比較検討を行い、『東瀛詩選』の文学史的な意義を説明した。 7.『東瀛詩選』の編集にあたっての日本側のスタッフの一人である、北方心泉の果たした役割を中心に、成立に至る事情及び『東瀛詩選』が果たした日本と中国の文化交流上の意義を説明した。
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