平成15年度は、以下の4項目を研究活動として予定していた。 (1)書誌データの整理 (2)調査の実施 (3)データの電子化 (4)善本の確定 平成15年度の研究活動においては、上記の(1)に相当量の時間と労力を要し、ほぼ(1)に終始せざるを得なかった。(1)は、既に調査の完了した慶長年間から明暦年間にいたる書誌カード(5600件)の整理を指すものである。当該の書誌データは精粗の差があるため、全ての書誌カードを点検する必要があった。点検の開始後、書誌データに分類を付す必要が生じ、各所蔵機関の所蔵目録を参照しつつ、分類作業を行った。 分類は、和書(国書)・和刻本漢籍の2大別を基本としたが、仏書は古くから我が国に流通した書物であるため、和書(国書)・仏書(日本撰述を除く)・和刻本漢籍の3大別を採択した。各分類の中において、細分類を行ったが、古態の分類(近世書林書籍目録など)に拠らず、あえて現代的な名称を用いるよう努力した。内容を類推することを容易にするためである。一方、和刻本漢籍は四庫分類を用いた。 当該の作業により、予定していなかった研究成果が副産物として生じてきた。それは、近世初期における、和書出版の諸問題であった。近世ごく初期(寛永期を中心とする)においては、従来より「固い書物」(儒諸・仏書など)が趨勢を占めると解説されてきたが、むしろ和書出版の領域においては、中本形(近世中後期の中本よりは2〜3cmほど大きい)の実用書が頻繁に出版されていた事実が判明した。さらに、「御成敗式目」の版式は「庭訓往来」と酷似している等、従来の所蔵目録に採択される分類を改める必要性が生じてきた。そのため、「和書(国書)(分類名)の中に「実用書」の項目を設け、近世前期における実用書の変遷(小型本から絵入り大型本へ)を看取できるよう、試作をくり返した。
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