研究課題/領域番号 |
15520141
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 研一 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (80170744)
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研究分担者 |
藤田 緑 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (10219024)
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キーワード | 啓蒙主義 / 異境 / ロシア的農奴制 / ドイツ文化圏リヴォニア / 先住民農奴 / ブラック・ディアスポラ / 奴隷貿易 / アフリカ系英国人 |
研究概要 |
佐藤は、昨年度までの北ヨーロッパの「異境」、リヴォニアの農奴制に関する考察を踏まえながら、当地の中道改革派牧師フーペルの啓蒙主義的活動が、いかにヘルダーやレンツの文学の内実に関わっているのか、解明を試みた。その際、前者の『民謡集』(1778-79)や『人類歴史哲学考』(1784-91)や『人間性促進のための書簡』(1793-98)、あるいは後者の「疾風怒濤」時代の戯曲や小説に分析を施した。その成果のひとつが、論文「入植牧師A.W.フーペルとかれをめぐる作家たち」である。そのうえで、特異な「異境」リヴォニアとの交流を基底にもつドイツ文学において、どれほどヨーロッパ文化の自己批判的な側面を読みとることができるのか、目下、藤田とも討議中である。なお、ここでは、比較検討のために、南ヨーロッパの「異境」、すなわち当代オスマン・トルコ属領バルカン半島とドイツ文学との関係にまで考察の視野を拡げつつある。 藤田は、これまで18世紀英国における黒人社会の実態を明らかにすべく、黒人の自伝や書簡、当時の新聞・雑誌ならびに奴隷制・奴隷貿易関連資料を中心に考察を加えてきた。平成17年3月には、英国ナショナル・ギャラリー、ナショナル・ポートレート・ギャラリー等において、6日間にわたって黒人の図像調査を実施した。今年度は、18世紀ロンドンのアフリカ人社会のなかでも、特に二人の対照的な黒人、すなわちジョンソン博士の召し使いであったフランシス・バーバーと、元奴隷で後に奴隷解放運動家として活躍したオローダ・エキアーノに焦点を定め、彼らの活動と英国人の反応の解明と分析を試みた。 しかも、佐藤と藤田は、たえず研究成果を相互に検討し批判しあい、統一的視座を深めようと努めてきた。研究成果をまとめて公に供した後も、佐藤は東プロイセンやバルカン半島、藤田はスコットランドやフランスに考察の対象を拡げて、18世紀ヨーロッパにおける「異境」をめぐる研究を継続する予定である。
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