研究課題
基盤研究(C)
中世を中心にした昨年度に引き続き、本年度はルネサンスそしてやや飛んで20世紀のアメリカとの関連で分析を進めた。ルネサンスでは、シェイクスピアの『トロイルスとクレシダ』に具体的な例を取り、そこに窺うことができる「他者」表象を見た。それは昨年度からの延長線上にある中世ラテン的なものが支配的であるが、それらが新時代の価値観を通じてどのように変容して受け止められ得るかに注意した。例えば、大宇宙たるマクロコスムと小宇宙たる人間(マクロコスム)の照応関係に基づくどちらかというスタティックな古代からの伝統的世界観は、一登場人物の意見表明という形をとって、ダイナミックなひとつの「他者性」へと変容されている、すなわち、ラテン的西欧の大陸的伝統は、ルネサンスのアングロサクソン的文脈のなかで基盤であることを止め、ダイナミックな世界像の一要素と変えられたのである。近代の脈絡では、「近代」という書説のヨーロッパ大陸的要素が、アングロサクソン文化では如何に受容されたかを主に第二次世界大戦においてイギリスあるいはアメリカへと亡命を余儀なくされた(ユダヤ系)ドイツ人の思想を手がかりに考察した.対照的な「近代論」を展開したカール・レーヴットとレオ・シュトラウスに焦点を当てることにより、それぞれの「世俗化論」(レーヴィット)と「古典主義」(シュトラウス)の相違を見定めるとともに、それぞれの英米等での影響と受容を分析する基礎作業を行った。前者は、いわば「言説主義」とも言うべき、言説の外にはなにも存在しないという相対論的学説の典型を提供し、後者はいわば「超越主義」と言うべき昨今のアメリカ支配における「反相対論的」判断の地平を提供するだろう。総じて、過去2世紀にわたるアングロサクソン的支配からは想像しにくいが、その文化的言説は大陸起源の他者的言説に満ちていると言うことができるだろう。
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European Studies 4
ページ: 23-54
Cultural Studeis in Asia, (eds.S-K Kim, A.Gordon) (Seoul National University Press)
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Studies in World Literature and Translation (Peking University)世界文学的翻訟研究 (北京大学)
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Cultural Studies in Asia (eds.S-K Kim, A.Gordon) (Seoul National University Press)
Studies in World Literature and Translation (Peking University)