本研究には何よりも一次資料の収集が肝要であり、計画では初年度の夏期休暇中にイギリスでの数週間にわたる資料収集を予定していたが、追加交付として15年10月に助成が決定されたため、イギリスへの出張期間を約一週間に縮小して資料収集を行わざるをえなかった。これにより、17世紀王党派文学におけるジャンルの使用という観点から興味深い資料をある程度収集できたが、なにぶん資料収集期間が短かったため、一次資料を広く収集するという当初の目的は十分に達成できなかった。今後何らかのかたちで再度資料収集を行い、一次資料の不足を補いたいと考えている。 帰国後、収集した一次資料(マイクロフィルム)の分析を行うとともに、17世紀イギリス文学とジャンル理論を中心とする日本で購入可能な書籍を収集し研究を進めている。また、ジャンルの混淆という観点から注目されるアイザック・ウォルトンの『釣魚大全』についても、それが使用している先行ジャンルの起源や伝統について調査を行っている。特にパストラルの古典文学以来の伝統、また、それが孕む特殊な意味指示作用や含意には17世紀王党派文学の政治性と密接に結びつく側面があり、この点はさらに考察を深めたいと考えている。 設備面では、これまでネガ印刷しかできなかったマイクロフィルム・リーダーに両極反転キットを購入・追加することでポジ印刷が可能となり、資料分析の利便性が大きく向上した。また、老朽化していたコンピューターを買い替えたため、資料の検索、辞典類の使用、文書の作成等が極めてスムーズに行えるようになり、研究効率が向上した。今後これらの機器をさらに活用し、それにみあう研究成果をあげたいと考えている。
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