本年度は、夏休みを利用してイギリスのハル大学図書館内にあるラーキン資料館を訪れ、そこにあるラーキンの詩作品の草稿をはじめとする関係諸資料を調査して、主要な詩の形成過程を特に文体の観点から研究した。また彼はさまざまな押韻パターンを駆使して、詩の意味の一部を表現しようとしているのではないかという仮説の下に、韻に関する研究をした。この結果、昨年度に続き、韻と詩の内容との相関関係の一面を明らかにすることができたのではないかと思う。さらにハル大学では、ラーキン研究家達と最新の研究動向について話し合ったり、意見交換を行った。これらの研究成果をふまえて『京都大学文学部研究紀要』(第44号、2004年3月31日発行)に「ラーキン詩における文体的特質」と題する論文を発表した。彼の代表作である「教会に行く」と「ビル」の詩では、ある言葉をそれと関係の深い他の言葉で具体的に言い換えたり、ある特殊なものをより包括的、一般的なことばで表現したり、不吉な言葉を他の差し障りのない言葉で代用したりする例が目立つが、本論文では、これらの迂言的表現に焦点を合わせて両詩の関連性を論じ、さらに両詩の押韻パターン(とりわけ「ビル」においてはめずらしい押韻パターンが用いられている)のもつ意義や、韻と詩の内容との関連性を考察している。また夏に行ったアイルランドでは昨年度に引き続き、イェイツの文体、草稿関係の資料調査を行い、専門家と意見交換を行った。
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