研究概要 |
本プロジェクトではフィリップ・ラーキンの草稿をイギリスのハル大学内のラーキン資料室で調査し、単語、統語法、詩的形式などの分析を通して、彼の詩作品の文体的特色を明らかにしようと試みた。とりわけ韻に関して細心の注意を払いながら、押韻のパターンが詩のテーマとどう関わっているかを実例を示しながら考察した。また彼の韻をイェイツ、オーデン、ヒーニーなどの他の現代詩人のものと比較しながら、ラーキンが詩の話者のさまざまな感情を伝えるために、不完全韻を含む韻の可能性を最大限追求していることを論じた。さらにテクストの内部構造を明らかにしたうえで、これまでの分析を考慮に入れ、より広い観点から作品の解釈を行った。 以上の研究を次の二つの研究論文にまとめて発表した。まず「ラーキン詩における文体的特質ー『教会に行く』と『ビル』における迂言的表現と韻を巡って」『京都大学文学部紀要』第44号85-108ページ(2005年)ではラーキンの文体的特質の一つである迂言的表現と韻に焦点を合わせ、両者の役割を、互いに関連を持つ「教会に行く」と「ビル」の二つの詩において論じる。次の「ラーキンのエレジーと死に関わる詩をめぐって」『京都大学文学部紀要』第45号1-26ページ(2006年)では,これまで充分論じられてこなかった、エレジーと死に関する詩を選んで、基底に流れているさまざまなレベルの二重構造を明らかにし、それに絡めて形式と内容の関係を論じている。 イェイツに関しては彼が死の前年の1938年に滞在したフランスのMentonとRoquebruneで書いた作品を調査した。
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