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2005 年度 実績報告書

18世紀ドイツにおける文学的人間学の研究

研究課題

研究課題/領域番号 15520175
研究機関大阪大学

研究代表者

津田 保夫  大阪大学, 言語文化研究科, 助教授 (20236897)

キーワード人間学 / ドイツ文学 / 18世紀 / 啓蒙主義 / 身体論 / 心身問題 / ドイツ思想史 / 生理学思想史
研究概要

本年度は、18世紀ドイツの文学と美学における人間学的要素を中心に調査を進めた。美学の分野では、とくにマイアーの『情動一般に関する理論的教説』を取り上げて、そこに見られる情動理論を検討した。その結果、マイアーはデカルトの『情念論』を批判して、情念を身体からの魂の受動とは見なさず、魂自体の能動的行為から生じるものだとして、魂の下位認識能力による混乱した認識に基づけようとしていたことがわかった。その点で、マイアーはライプニッツ=ヴォルフ学派を継承する形而上学者であるが、感情や情動など魂の非理性的側面に注目したことは、当時の人間学との類縁性を示していると言える。
文学の分野では、ヴィーラントの小説をまず検討した。彼の小説『ドン・シルヴィオ』や『アガトン』では、想像力の病的状態としての熱狂や妄想とその治癒の過程が、心の内面と外的現実との折り合いをつけながら一人の人間が発展成長していく過程として描かれており、近代小説の一つの類型を作り出すこととなった。その理論的基盤を与えようとしたのが、ブランケンブルクの『小説試論』であり、そこではとくに一人の個人の「内面史」を描くという人間学的な問題が小説の課題として課せられることにより、小説というジャンルが人間学と結びつけられた。
次に、カール・フィリップ・モーリッツの『経験心理学』と心理学小説『アントン・ライザー』を取り上げた。モーリッツの経験心理学は、徹底した自己と他者の心理の経験的観察に基礎をおくものであり、それを小説形式にした心理学小説『アントン・ライザー』では、ブランケンブルクの理論のように神意による幸福な結末は描かれず、主人公の挫折に終わっている。
シラーは、モーリッツのそのような部分を批判し、作者による創造的な筋の創作に文学の重要性を見いだし、同時にそれによって読者や受容者の情念の浄化を目指し、美的教育構想を展開し、それに基づいて後期の悲劇を実作したのである。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2005

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] シラーにおける情念の問題2005

    • 著者名/発表者名
      津田保夫
    • 雑誌名

      ドイツ文学論攷(阪神ドイツ文学会) 47号

      ページ: 21-42

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公開日: 2007-04-02   更新日: 2016-04-21  

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