初年度2003年〜2004年においては、今まで発表してきた論文の中から本研究に直接関わる単独論文のいくつかについて推敲を重ねたり、新たに入手した文献からの追加をも考慮して再編集を行い、本研究の骨子となる論述を進めていった。この間に同時にインド説話の十分な知識を補うために『ジャータカ』などを中心とするいわば原典説話の研究にも多くの時間を費やした。 二年度2004年〜2005年にはフランス出張を通じて図書館閲覧、書店での文献収集を行い、未読の文献の入手に没頭した。基本的には初年度と同じ方向で研究活動を続行し、西欧とインド、インドと日本を繋ぐ新たな接点の発掘に留意し、この点ではこの年度中の研究活動は充実した成果を上げることができた。また、全体の章分け構想に関しても、当初考えていた枠組みに多少の修正を加えるに至った。 最終年度2005年〜2006年では過去二年間の研究作業を総括する方向で研究を進め、第三章を占める予定となる「インド経由西と東」という段階に特に焦点を当てた。この領域に関して日本でも過去に若干の考察は見られるものの、より体系的な視点から西と東を結び合わせた研究としての新味はある程度示しえたと自負している。 研究成果報告書においては、主に紙面の関係で第一章相当部分「インドと西欧」に関して公にするに留めたが、実際には第三章に至るまでの草稿は準備できており、現在これに推敲を加え全体を近い未来に上梓する予定である。
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