研究概要 |
貴志雅之は、Tony KushnerのAngels in Americaの主体を巡るクイア・ボディ・ポリティクス批評で周縁化されてきた「女性」を、新たな歴史性構築のエージェントとして論じた論考を『アメリカ演劇』に発表。また、Velina Hasu HoustonのTeaについて、歴史認識再考と正史解体を要請する戦争花嫁の身体メディアによる記憶の再現とコミュニオンに関する論考を発表。さらに、銃を帝国支配の記号として発表した第43回日本アメリカ文学会全国大会シンポジアで、人種的歴史表象の再表象化メディアとしてアフリカ系そして日系アメリカ人の身体表象を検証した。渡辺克昭は、Derrida、Zizekを援用しつつ、DeLilloの最新作Cosmopolisにおける身体意識の変容をサイバー資本との関係において論じた論考を共著『病いと身体の英米文学』に発表。併せて、『英語青年』の「海外新潮」においてAuster, Pierre, Baker, Coover等を論じ、身体論とメディア論の接合を試みた。また、共著『ポストコロニアル文学の現在』でも、同様の視座からAtwoodとOndaatjeを分析し、日本アメリカ文学会全国大会、阪大英文学会大会のシンポジアにおいて、文学の「弾道」を検証した。石割隆喜は、Thomas PynchonのV.におけるパラノイアが「ヘーゲル主義」的であるがゆえにポストモダニズムと親和性をもち、したがって作品における歴史感覚の喪失の主要因となっていることを指摘した論文を『英文学研究』に発表した。また『英米研究』に、学部学生にとっての批評理論の重要性を説いた論考を発表。またPynchonのエッセイ"Is It O.K.to Be a Luddite?"についての研究を、その9・11テロとの関係性ならびにPynchon的「歴史」の使用可能性という観点から継続中である。
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