研究概要 |
平成16年度はジュール・ルナールとジャン・ジョレス,レオン・ブルムといったフランス社会党の創設期の主要な政治家の関係を俯瞰し、その交流に注目して研究を進めた。ことにジャン・ジョレスについてはルナールの『日記』『村便り』(Mots d'Ecrit)、書簡を通じて把握しうるばかりでなく、ことに文学作品『田園詩』の分析を通しては興味深い事実が指摘できることが分かった。すなわちジョレスが創刊した社会党の機関紙"L'Humanite"にルナールは少なからぬ小篇を発表しており、しかもそれらの作品は『田園詩』第二版に組み込まれているのである。この『田園詩』についてルナールはジョレスに捧げる希望を『日記』の中にもらしており、ルナールがなみなみならぬ敬愛の念をこの政治家に抱いていたことが分かる。しかもその中にはルナールの立候補したシトリー村の選挙の様子が詳細に描写され、また村長となってからの故郷の村に対する彼の思いも書留められている。これら晩年のルナールの政治と文学の興味深い関わりについては、大阪教育大学紀要に科学研究費補助金による研究成果として発表した(平成17年3月8日受付)。またその続篇の形で、さらに平成16年度の研究成果を平成17年度夏に発表する予定でいる。そこではジョレス、ブルムらのドレフュス事件をめぐっての対応を明らかにし、それについてのルナールの反応を明らかにすることになる。以上平成17年度に発表予定であるものを含め、平成16年度の研究実績の概要をまとめた。
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