20世紀パリのシャンソンに通底するメロドラマ性を明らかにする前段階の作業として、19世紀にパリを舞台に確立された「メロドラマ的思考法」を、シャンソン、オペラ、シネマ、小説等の具体的な考察を通し、メロドラマに不可欠な直接的情動効果の基本パターンを抽出することで、提示することが出来た。その研究過程での、海外調査研究(パリ)、新たに発足させたシャンソン研究会、講演会等は、文献資料の広範な収集、学際的知見の獲得、独創的な発想との出会い等々を齎し、有意義な結実を見た。 1、科研の課題と取り組むため、シャンソン研究者と組織した「シャンソン研究会」で、以下のような研究発表を行い、意見交換し、新たな知見を得た。 (1)、2003年6月信州大学人文学部にて、三木原が映画『カスク・ドール』におけるメロドラマ性を、背後に流れるシャンソン『さくらんぼの実るころ』を骨子に分析し、同大学同学部助教授吉田正明氏が、シャンソン『羊飼いの娘がいました』をテーマに伝承歌謡に潜む隠された歴史の真実、残酷さと男女のエロティシズムについて発表した。その後、シャンソンに表象された、時代を超えての性愛を巡り、研究者同士で活発に質疑応答、意見を交えた。 (2)、2003年8月信州大学人文学部にて、同大学農学部山本省氏がジャン・ジオノの『世界は歌う』の一節をとりあげ、自然の歌と人間の内声の照応についての興味深い考察を発表した。 2、また、当科研研究課題に関連した研究の成果を暫時公開すべく、自ら以下の講演を行った。 (1)、2003年5月、京都労働者総合会館にて、シャンソン『ぼくの愛』について (2)、2003年7月、西宮市立教育会館にて、シャンソン『ラ・メール』について (3)、2003年12月、西宮市立夙川公民館にて、シャンソン『枯葉』について (4)、2004年1月、NPO舞台芸術トレーニングセンターにて、オペラ『椿姫』について (5)、2004年2月、西宮市立夙川公民館にて、オペラ『カルメン』について 今年度明らかにした「メロドラマの作劇術」と、「20世紀パリのシャンソンの作詞術」の並行関係を、明らかにすることが、次年度の課題である。
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