女性の経済的・精神的自立を説いた急進主義者Mary Wollstonecraft(1759-97》は、フェミニズムの先駆的著作とされるA Vindication of the Rights of Woman(1792)において、Edmund Burkeの主張する保守主義的言説を激しく批判し、女性を抑圧する男性中心社会を徹底的に攻撃した。彼女はその発言においてのみならず実生活においても慣習に反逆する鮮烈な生き様をつらぬいた。かくして、Wollstonecraftの生き様・人生はロマン主義時代の小説の格好の素材となり、また彼女の人生が相対立する二面性を体現するがため、当時の作家達に思想の戦いの場を提供した、ということを実証した。このような知見を、Wollstonecraftの著作、彼女の実人生に対する言及が多数見受けられるSophia KingのWardorf; or the Dangers of Philosophy(1798)、Mary Ann HanwayのElinor(1798)、Mary RobinsonのThe Natural Daughter(1799)、Robert Charles DallasのPercival(1801)、Charles LucasのThe Infernal Quixote(1801)、Amelia OpieのThe Father and Daughter(1801)、Charlotte DacreのZofloya(1806)などの小説を分析することによってさらに補強、拡大した。平成15年度、16年度、17年度に得た研究成果をまとめて、報告書を作成した。
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