フランス19世紀挿絵本データベース作成の対象となるのは、イリュストレ・ロマンチックのうちパリ風俗物のジャンルに属し、19世紀に刊行されて著作権の問題がない図書である。これに該当するものとして、平成15年度には『パリの悪魔』と『新パリ』を、平成16年度には『フランス人の自画像』を購入した。それぞれの図書自体に膨大な分量があるため、研究補助によるテキストと画像の電子ファイル化はなかなか進まなかった。平成16年度末の時点で、『新パリ』は画像のスキャニングはできたもののテキストのOCR処理は半分まで終了した状態だが、『パリの悪魔』は二次スペルチェック、レイアウト修正、画像補正データの整備まで実行した。 『パリの悪魔』は「フランス19世紀挿絵本データベース」サイトを開設し、データを順次アップロード中である。このサイトへは、本研究代表者の個人ホームページ(http://pweb.cc.sophia.ac.jp/〜hsawada/)の「フランス文学」欄にタイトルが掲載されているので、容易にアクセスできる形にした。 作成したデータベースをもとにしてバルザックと「パリ神話」に関する研究事例の一つを公開する予定であったが、データベースの作成が遅れたため、比較の対象である『人間喜劇』の世界における神話の一例としての芸術家について調査を行った。これは「ロマン主義と現代神話-バルザックにおける<芸術家貴族階級>-」という題目の論文としてまとめ、現在投稿中である。
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