研究概要 |
二年間の研究計画の一年目にあたる本年度は、Life and Death of Jason, The Earthly Paradiseを中心に読解を進めた。同時に、韻文作品ではないが、モリスの『ユートピアだより(News from Nowhere)』の新訳を刊行した(個人訳、晶文社刊)。これには、訳者解説として「未だない・<どこにもない場所>からのしらせ」を付し、モリスのユートピア思想の今日的意義を論じた。 モリスの同時代の思想家および芸術運動との関連では、ジョン・ラスキン、およびアーツ・アンド・クラフツ運動へのモリスの影響について考察を進めた。ラスキンについては、ラスキン連続研究講座「ラスキンと建築」(ラスキン文庫主催、2003年4月12日、於市谷トモノホール)において「『ヴェネツィアの石』を読んで-ラスキンの思想を語る」を発表した。これはラスキンの主著The stones of Veniceを取り上げて、その文化史的意義を論じたものであり、モリスヘの影響についても言及した。また、アーツ・アンド・クラフツ運動との関連では、「ウィリアム・モリスとアーツ・アンド・クラフツ運動--デザイン思想と社会改革のヴィジョン」を『「インテリア」で読むイギリス小説-室内空間の変容』(ミネルヴァ書房)に寄稿した。加えて、2003年7月26日に関東学院大学で開催された「第3回アーツ・アンド・クラフツ・セツルメント国際会議」においてシンポジウム「アーツ・アンド・クラフツ運動と日本」の講師を務め、「宮沢賢治と農民芸術」を発表した。日本におけるモリス受容については、宮沢賢治のみならず、芥川龍之介への影響など、まだ十分に検討されていない部分があり、次年度にさらに考察していきたい。
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