研究概要 |
今年度の研究は次の二つに大別される。 1)ジョルジュ・バタイユ(1897-1962)の「他者」の問題を、彼の初期の概念「異質学」に立ち返って解明してゆくこと。そしてこの「異質学」の概念が近代西欧とくにフランスにおける異文化理解の底流にある姿勢-すなわち異質なものに開かれた姿勢-とつながることを理解した。その成果は日本語論文「ジョルジュ・バタイユにおける他者の問題-ジャポニスムへの新たな解釈に向けて(前篇)」に発表した。 2)19世紀後半のフランスにおける異文化理解の具体例として陶芸家エミール・ガレの日本理解を彼の実作にあたって把握すること。その際、ガレの自然観と日本人の自然観を対比させてその異同を理解すること。これらのために本年度は、松江北堀美術館へ赴いてガレの所蔵作品を精査し、また貴重な資料を入手した。その成果は、当時の日本人留学生高島北海(画家でもあった)の美意識、フランス象徴派の自然理解とあわせて、仏語論文「Galle, Takashima, et la poesie symbeliste de la nature」にまとめ、フランスの雑誌Le Pays Iorrainへの掲載を決めた(現在校正をすませ、刊行されるのを待っている段階)。
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