研究課題
基盤研究(C)
1.本研究は、バタイユの他者概念である"異質学"を検討して、異文化理解への新たな展望を切り開くことにむかった。その際に、単に"異質学"を操作概念として転用するのではなく、異文化を理解するうえでのこの概念の可能性と限界を認識し明示することに留意した。2.研究の対象として設定した分野、地域、年代は、芸術(とくに美術)であり、1860年のフランスを中心にしたヨーロッパである。異文化として特に注目したのは、近代西洋から見ての日本の江戸時代庶民文化である。具体的には、印象主義および新印象主義の画家(モネ、ゴッホ、スーラ、シニャック等)さらにアール・ヌーヴォーの装飾芸術家(エミール・ガレ)におけるジャポニスム(日本趣味)に第一に注目した。3.本研究の成果としては、上記の芸術家たちの作品に、バタイユの考える"異質学"(すなわち人間中心主義を離れて自然の内奥と交わろうとする姿勢)が先駆的に見られる点、および"異質学"的な姿勢が自然に根ざした日本の江戸時代庶民文化の深層を理解するうえできわめて有効である点を指摘しえたことである。この指摘によって従来のジャポニスム研究をいっそう深化させることができた。また"異質学"の限界については、ファシズムを、近代西洋にとっての内なる異文化(異質なるものを同質化する強力な政治システム)の出現と捉え、これに1920年代から30年代のバタイユの思想がうまく対処しえなかった点を指摘した。4.今後の研究の展開としては、"異質学"に立ってシニャック論を完成させるとともに、シニャック以降の現代アートに関して、広くその文化的な意義をフランス現代思想の他の概念に拠りつつ解明してゆく予定である。
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言語と文化 第2号
ページ: 73-92
風の旅人 第13号
ページ: 115-120
風の旅人 第14号
ページ: 130-133
ページ: 93-108
Language and Culture no.2
KAZE no TABIBITO no.13
KAZE no TABIBITO no.14
言語と文化 創刊号
ページ: 55-66
Le Pays Lorrain vol.85 no.1
ページ: 48-50
Language and Culture no.1
Le Pays Lorrain 101e annee Vol.85, no.1