アメリカ合衆国のホリンズ大学において、文芸創作教育の実践研究に従事した。文芸創作教育は、欧来に比べて日本では開拓の進んでいない教育研究分野であるが、アメリカ合衆国は、早くから文芸創作を国文科の大学教育に取り入れており、この分野における豊かな人材と、理論や実践の長い蓄積とに最も恵まれた国の一つである。今回の研究では、創作過程におけるディスカッションの重視や、指導方法の合理性・科学的態度を、日本での実践に適した形に応用する方途を探ることを目的とした。具体的には、同大学で実施された文芸創作ワークショップへ参加・見学することで、自らがアメリカの文芸創作教育を体験するとともに、担当者や参加者とのディスカッションを通して、アメリカ文芸創作教育の特徴であるワークショップ方式についての現状と課題とについての知見を広めた。また、同大学のライティングセンターや図奮館での調査で、書籍や論文、統計資料や過去の大学案内等の文献を分析し、アメリカにおける文芸創作教育の目的や展望、指導法、カリキュラム、教育環境、、評価などプログラム全般について研究した。19世紀後半からのアメリカの高等教育における文芸創作教育の変遷を辿るなかで、目的と教育環境の変化が、指導技術の発達や評価方法など、現在の文芸創作教育に大きな影響を与えたことがわかった。
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