1.子どものための創作童話ワークショップ開催の計画 アメリカにおける文芸創作教育の実践研究の一環として、倉敷市の主催で、子どものための創作童話ワークショップを国内で開催することが決定した。現在、地元の童話作家(松田範祐、八束澄子、和田英昭)と地域で活躍する市民グループを主体とした委員会を立ち上げ、8月の実施に向けて、プログラムの最終検討を進めている。アメリカでは、作品の共有(share)というプロセスを通して、書き手と読み手とのコミュニケーションを重視した作品づくりを行っているが、この方法を日本に導入する効果的な方途を探ることを大きな課題と考えている。 2.アメリカにおける文芸創作教育の歴史 19世紀末から現在までのアメリカの高等教育機関における文芸創作教育の変遷を跡づけた結果、現在の文芸創作教育、特にクリエイティブ・ライティングをめぐる、4つの対立点を指摘した。 (1)目的:仕事や日常生活における基礎技術の育成/創造的表現のための専門的能力の育成 (2)習得過程:基本となる国語力の習得後は、自然に発達/社会や文化への段階的・個別的な適応のトレーニングが必要 (3)対象:単一の文化的・社会的言語コミュニティ/多様なコミュニティ (4)社会的機能:平等な教育/エリート養成 これらのポイントは、文芸創作を教えることは可能か否かという問題を論じる際の、前提条件となるだろう。 3.文芸創作教育におけるエクササイズの活用 日本における作文教育をサポートする手段として、アメリカ文芸創作教育のエクササイズを具体的に取り上げた。エクササイズ自体は道具であるから、その特性をうまく機能させるには、明確な目標のもとに利用する必要がある。エクササイズの目的には、娯楽、技術、自己表現、共有とがあるが、教育におけるコミュニケーションの重視という現在の教育ニーズから、特に共有の効果的な実施が求められる。
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