研究課題
助成研究の最終年度である18年度は、(1)「軍記物語の研究成果を英雄叙事詩研究に応用する」、および(2)「ヨーロッパにおける最新の研究動向を紹介して日本での新たな可能性をさぐる」、という当初の計画を達成することを目標とした。そのため従来以上に内外の研究協力者と緊密な連絡を取り、かつさまざまな助言を受けることにより、さらなる実証例を収集・解読し、また多くの貴重な文献資料を入手することができた。同時にその過程で、平成15-17年度に公表した論文で展開した方法論の充実・整備にも取り組んだ。これらの成果の一部はギーセン大学教授オトフリート・エーリスマン教授の退職記念論文集で公表したが、来年度以降も順次発表してゆく予定である。その一方で、中世の日本とヨーロッパというまったく異なった文化圏で成立した文芸を比較するための理論をできるだけ早く公表すべきであるという助言も(とりわけ海外研究協力者から)得た。そこで比較史の方法に学びつつ、13世紀にユーラシア大陸の東西で起こった「日本対モンゴル」および「ヨーロッパ対モンゴル」戦争の実態を比較した。その目的は、二つの戦争に関する記録文書等から読みとれるさまざまな共通点・類似点と相違点を考察し、文芸作品が成立した実社会を従来行われていた以上に明瞭に対照することである。具体的には日本とヨーロッパの戦士(武士・騎士)の軍装・戦術・死生観・主従関係のあり方・国家観を中心に考察を進め、その成果の一部を18年8月にウランバートルで開催されたムンフテンゲル国際学術大会で「The Mongol 'Storm' in East and West」として、また同年10月には北海道大学公開講座で「主従関係の破綻と回復」として発表した。しかし比較理論の構築にはなお考察を要するので、これを来年度以降の課題としたい。
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すべて 雑誌論文 (3件)
グローバリゼーションと多文化共生(伊藤章(編))(北海道大学大学院国際広報メディア研究科・言語文化部研究報告叢書66) 66
ページ: 31-50
独語独文学研究年報(北海道大学ドイツ語学・文学研究会) 33
ページ: 69-87
Von Mythen and Maren. Festschrift fur Otfrid Ehrismann. Hrsg. von Gudrun Marci-Boehncke/Jorg Riecke. Hildesheim : Olms 1
ページ: 626-643