研究概要 |
本研究の目的は,タミル現存最古(紀元前後〜後5世紀)にして古来絶大な権威をもってきた詩論を含む広義の文法書『トルハーッピヤム』(以下Tol.)の第3部「詩論」(他は第1部「音韻論」,第2部「形態論」)の訳注研究の一環として,刊本や写本を収集し,それら諸版の間の異読をもとに基本テキストを準備することである。 当初,今年度の目標としていたことの,現時点での実績は以下のごとくである。 1)Tol.「詩論」部分の電子テキストの単語に区切った形式のテキストを作成した。入力ミスなどの基本的誤りは修正したが,刊本間の異読に関しては部分的に入力済。 2)インドでの調査は実現していない。マドゥライ大学のもつ写本のデジタルコピーの入手については,交渉は進行しつつも,まだ現物をえてはいない。 3)ドイツ・ケルンで行われる予定であった「トルハーッピヤム・ワークショップ」は,次年度(平成16年)延期された。 4)大英図書館(ロンドン)でのTol.「詩論」の写本コピーであるが,出張が3月後半であり,現時点(3月上旬)では実現していない。 他方,当初問題視していなかった問題も浮上した。19世紀半ばから始まるタミル古典(Tol.も含む)の再発見では,U.V.Swaminatha Aiyar(1855〜1942)とS.V.Damodaram Pillai(1832〜1901)とが大きな役割を果たし、なかでも前者の役割が高く評価されている。しかし,よく吟味してみると,後者のほうが,古典研究では先行している。そこで,後者に関する数少ない評伝等を収集し,古典再発見のプロセスの見直しを図っている。
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